第103章 これで※
「やっぱり、如月さんには伝えてなかったんだ」
「き、聞いてない・・・」
いつの間に、そんな話が進んでいたのだろう。
確かに、もうポアロに居ない方が良い事は分かっている。
けど、何も言われずにそうされたのは・・・。
いや、だった・・・なんていうのは。
「・・・・・・」
そんな事を言う資格はわたしには無いか。
言ったところで辞めない訳にもいかない。
この場合、事後報告が・・・ベストだ。
できればコナンくんの口からよりも早く、聞きたい所ではあったけど。
「多分、安室さんも察してるんだと思う」
察している?
「・・・FBIとの取引のこと?」
「うん」
そう、だろうな。
流石に彼が何も勘づかないはずがない。
・・・でも。
「・・・大丈夫。公安には絶対バラさないから」
バラす、というよりは証さない。
必ず公安の知らない水面下で進める。
・・・そして、成功させる。
「僕さ、如月さんが今回の選択をしたのは間違いじゃないと思うけど・・・手段は違う方法でも良かったんじゃないかと思う」
そう話すコナンくんに視線をやると、彼は目を伏せ暗い表情をしていた。
「そうだね」
確かに、零にとっても残酷な手段を取った。
でも、そうしなければ・・・。
「どうして、こうしたの?」
・・・そうしなければ、零は。
「・・・江戸川コナンくん」
「な、なに・・・?」
この理由を明かすつもりはない。
でもヒントは与える。
そう伝えるように改めて彼の名前を呼べば、それを察した様子でコナンくんは首を傾げた。
「貴方は、全てが終わった時・・・どこにいるの?」
彼なら、この質問の意味が分かるはずだ。
私がわざわざ江戸川コナンの名前を口にし、そう尋ねれば。
「・・・・・・」
工藤新一に戻った時、江戸川コナンはどこにいるのか。
「確かに今ここに存在はするけど・・・本当はそうじゃないよね?」
困らせるつもりはないけれど、彼は軽く下唇を噛むと言葉を飲み込んでしまって。
・・・彼だって、なりたくて江戸川コナンになった訳ではないのに。