第103章 これで※
「そ、それより・・・!」
仕切り直すように彼はパタパタとこちらへ小走りでやってくると、私の隣へとソファーに飛び乗るように腰を下ろした。
「僕に何か用だった?」
「ああ、ボウヤに頼み事だ」
コナンくんから沖矢さんへ、言葉を発している方へと視線を動かして。
私が居ても構わず話を続けるということは、私が聞いても問題は無い事なのだろうと、とりあえず少し荒ぶった心臓を落ち着かせた。
「彼女の相手をしてやってくれないか」
「!?」
・・・だがそれは、落ち着く所か再び大きく反応させられてしまって。
何故コナンくんに私の相手をさせるのか、と目で訴えると、沖矢さんは笑顔を崩さないまま、私に視線を向けた。
「FBIには心を開いているそうだが、沖矢昴には開いていないみたいだからな」
「そ・・・っ」
それは理由になっていない。
仮に沖矢さんに心を開いていないとしても、コナンくんに私の相手をさせる必要がどこに・・・。
「紅茶、入れてきます」
反論は聞かない。
そう言うように、私に何かを言う隙を与えないまま、彼は沖矢昴でキッチンの方へと姿を消した。
「ごめんね、コナンくん・・・」
何だかこちらの都合に巻き込んでしまったようだ、と手を合わせて謝るが、先程とは違い、コナンくんは顔色一つ変えず私を見て。
「ううん。僕も如月さんの事、気になってたらから」
それ所か、ニコッと無邪気な笑顔を見せた。
・・・別に沖矢さんに心を開いていない訳ではないのに、なんて事は本人にもコナンくんにも言うべきではないのだろうな。
「そういえば、安室さんに会ってないの?」
「・・・1週間くらいね。連絡も取ってない」
でもこういう事は初めてではない。
それに、今は公安にとってもFBIにとっても、私が動けば面倒事が起きる可能性が高い。
会える方が難しい、のだと思う。
彼も恐らく今は公安の仕事を・・・。
そんな私の想像は。
「・・・昨日ね、安室さんポアロで働いてたんだ」
脆く崩れた。
「ポアロに・・・?」
それを聞いた瞬間、どこか自分の中で何か嫌なものが体を流れた気がして。
「如月さんの事聞いたら、辞めたって聞いたから」
そしてコナンくんのその言葉に、血の気が引くという感覚を、苦しくなる程に味わった。