第102章 ずっと
「赤井秀一として抱いていれば、変わったかもしれないだろう」
「か、変わりませんよ・・・」
動揺しか感じられない。
何に動揺しているのかも分からないが、とにかくこの状況は良いとは言えない。
「とりあえず、退けてくださ・・・」
「君は無防備過ぎると、何度言えば分かるんだ?」
・・・おかしい。
赤井さんの様子がおかしい。
その目が何を言いたいのか分からない。
でもそこから逸らすことはできず、冷や汗が頬を伝って。
彼の手が顔の方へと伸びてきたことを感じると、息が更に詰まるようだった。
「・・・ッ」
落ちていた髪を耳にかけるように、彼の指がゆっくり動いて。
ほんの少し、耳にそれが触れた瞬間、体の強ばりからビクッと反応をしてしまった。
「でもそんな君が、可愛くて仕方がないんだがな」
・・・沖矢さんみたいなことを言う。
いや、それは当たり前の事なのだけど。
どうも今日は頭が混乱しやすい。
とにかくここに追いやられたままでは良くないと思い、どうにか彼を動かそうとした時。
「・・・!」
出入口の方からわざとらしい咳払いが聞こえてきて。
「こ、コナンくん・・・!?」
その方向へ目を向けると、彼は私達を視界から外しながら何とも気まずそうに立っていた。
「昴さん、わざとでしょ?」
「そう思うか?」
視線は逸らしたまま、コナンくんは沖矢さんに尋ねては扉にもたれ掛かるように体を預けた。
その質問に沖矢さんは、どこか楽しそうに口角を上げて、ゆっくり私から体を離した。
「こちらとしては、ノックをしてほしかった所だがな」
それは私もそう思うが、でもここはそもそも・・・。
「だってここは僕の・・・」
コナンくんも沖矢さんの言葉に反論仕掛けたが、皆までは言わずそこで止められた。
「僕の・・・?」
沖矢さんが続きを促せば、コナンくんは軽く目を泳がせて。
「ぼ、僕の親戚の新一兄ちゃんの家だから!」
・・・彼が何を言いかけたのかは分かったが、そういう誤魔化しは相変わらず苦手なのだなと思うと同時に、早くバラしてしまえばいいのにとも思って。