第102章 ずっと
「俺と体を重ねた事は、後悔しているか?」
「!?」
・・・今日の沖矢さんはやたらと質問が多い。
それだけなら、良かったのに。
「き、急に何の話ですか・・・」
「忘れた訳じゃないだろう?」
そう言いながら、沖矢さんは操作していたタブレットを伏せて置き、ゆっくりと私に近付いてきて。
「忘れる訳・・・ないじゃないですか」
忘れろという方が無理な話だ。
あれは私が全面的に悪い事なのに。
忘れるなんてそんな都合の良い事、できるはずが。
「なら、もう一度聞こう」
ソファーに座る私を追い込むように、彼は背もたれへ手を付き、肩膝を乗せて僅かにソファーを軋ませた。
「後悔、しているか?」
真っ直ぐな視線で私を見るその目は、赤井秀一のものだった。
体はまるで固まったように動かず、息すら止まっているようで。
「どうして、そんな事聞くんですか・・・」
今更、と言えばそう。
でも私にはそんな言葉で片付けられないのも、また事実。
そもそも、この話題は持ってきてほしくないのだけれど。
「後悔しているなら、後悔しない抱き方をすれば良かったと思っただけだ」
一体それはどんな抱き方なのか。
嫌われるようなソレ、だろうか。
・・・いや、そうではなくて。
逆に後悔していないと答えていたら・・・。
「まあ、後悔していないのなら、後悔するくらいに抱いておけば良かったとも思っているが、な」
「結局答えは一緒じゃないですか・・・っ」
思わず、彼の答えに心の声が出てしまった。
いつもなら心の中だけで言う言葉を、つい口から放してしまって。
「ああ。俺は後悔しているからな」
・・・なぜ、彼が後悔するのか。
「君を、沖矢昴として抱いた事を」
「!」
でもあの時は、沖矢さんが赤井さんだという事を知らなかった。
いや、知っていたら良いという話でもないけれど。
そもそもあれは、沖矢さんに何をされても気持ちが揺れることはないという事を示す為の・・・もの、で。