第102章 ずっと
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FBIの作戦会議は、滞りなく終わった。
その間彼らも、私は居ないものとして扱ってくれた。
ただジョディさんだけは、何度か私の手を握ってくれて。
この作戦にリスクが無いとは言い切れない。
最悪の可能性も残っている。
でも今更そんな事を言っていても仕方がない。
もう、あとは。
・・・決行するのみ。
「不安か?」
「・・・?」
あれから1週間程経った日。
零からの連絡は無く、今日も大人しく工藤邸で過ごしていた時だった。
相変わらず工藤邸で過ごす間も、沖矢昴の格好で居る事を徹底している彼から、タブレットに目をやったままそんな質問を突然投げられたのは。
「そんな顔をしている」
ソファーに座って、ただボーっとしていただけ。
・・・という言い訳は、この男の前では通用しない。
「そうですね。公安がバックにいませんから」
喉はようやく調子を取り戻し、昨日には彼とあれこれ言い合えるくらいにはなっていた。
「少しは気持ちが揺らいでくれても良い気がするがな」
気持ち?
「・・・沖矢さんにですか?」
今一緒にいるのは自分なのだから、とでも言いたいのかと思ったが。
「いいや、FBIにだ」
残念ながら、それは自意識過剰だった。
「FBIには気持ちがあるつもりですけど」
「そうか」
クスッと笑う顔は、何処か赤井さんに似ている。
中身がそうなのだから当たり前と言えば当たり前だけど。
「・・・消えかけているな?」
そんな彼の顔を横目で見ていると、タブレットからは変わらず目を離さないまま、更にそう問われた。
「何がですか?」
彼の言葉に思い当たる節がないと首を傾げると、彼はようやくこちらに目を向けて。
そして笑顔を崩さないまま、自身の首筋を指差してみせた。
「!」
そういう、事か。
確かに思い当たる節はあった。
零が付けたキスマーク。
それが消えかけている事は、私も気付いていた。
でも今の会話から、それを指摘されているとは思わなかったから。