第102章 ずっと
『すみません』
重たい体で、そう文字を打っては見せて。
いつもこんな事の繰り返しだ。
結局いつも・・・。
「そんな顔をするなと言ったはずだ」
「・・・ッ」
病人相手とは思えない力の強さで腕を引かれると、ベッドに腰掛けていた体を無理矢理赤井さんに立たされた。
まだ上手く力の入らないまま立たされたせいで、案の定フラつくと、慌ててジョディさんがその体を受け止めてくれて。
「一人で立てないのなら、立たせる人間も、支える人間も、君には沢山いるだろう」
「・・・っ」
・・・何だろう。
何かが緩んでいるのだろうか。
自分でもよく分からないが、助かったのだという今更の安心感と、彼らが目の前にいる心強さと。
そして、最も頼れる恋人が・・・私にはいること。
それら全てをじんわり実感してきた瞬間。
鼻の奥がツンと痛くなって。
「・・・っ、あり・・・が、とう・・・ござい、ます・・・」
ボロボロと大人気無く涙が零れて。
ガサガサの声でお礼を絞り出して。
そんな私を優しく抱き締め、頭を撫でてくれるジョディさんの胸で、暫く泣いた。
ーーー
「落ち着いたようだな」
「・・・はい」
その後私は、声は赤井さん、姿は沖矢さんとなった彼と共に工藤邸へとやって来た。
病院で薬を貰ったおかげで、喉も昨日よりはマシになっているような気がして。
それでも声を出すのは極力控えながら、今日はここで眠るんだ、という覚悟を決めていた時。
彼は私の側まで来ると、私の顔を覗き込むようにして。
「悪いが、こちらも状況は良いとは言えない。これからここに集まって、会議をするが・・・」
そこまでを、赤井秀一で。
「良い子で待てますか?」
「っ・・・」
最後に、沖矢昴として言葉を足した。
本当に別人なのではないかと思う。
それ程までに、彼の雰囲気は瞬時にガラリと変わる。
『分かりました、部屋にいます』
彼のハッキリしないお願いのようなものに、そう返事を打って見せると、早々にいつもの部屋へ向かおうと体を反転させた。