第102章 ずっと
私、は・・・。
「・・・ッ・・・」
・・・私は、利用されたのか。
FBIを攻撃する為に、私は。
「そんな顔をするな」
「・・・っ!」
自然と顔が強ばっていると、頭に赤井さんの手が乗せられて。
ふと視線を上げれば、珍しく笑みを浮かべた彼の表情が目に飛び込んできた。
「恐らく、半分はベルモットの独断での行動だ。でなければ、FBIと繋がっていると判断している時点で君はもうこの世にいない」
・・・それも、そうか。
そもそも、まだ生かされている事が不思議でならない。
組織に両足を突っ込んでいることも。
・・・実際、私を組織に引きずり込みたいと考えているのは、ベルモットだけのようだけど。
「我々FBIを攻撃する事は計画されていた。その為に手薄にさせる方法はベルモットに任され、君を巻き込みたくなくて、あの場に放置したのだろう」
それが、分からない。
何故ベルモットは、私を生かそうとも殺そうともするのか。
結局、車の中でのあの煙の正体は、一時的に痺れを起こさせる薬だったとは聞いた。
・・・そういえば、あの後。
『爆破って、何だったんですか』
赤井さんが、そんな事を言っていたと思い出し、受け取ったスマホに打ち込んでは赤井さんに画面をそっと見せた。
「車内の重量が減った際に、時限装置が作動するようになっていた。少しでも証拠を残さない為だろう」
だから逃げたのが、その下の川の傍だったのか。
最短ルートで爆破の被害を比較的受けにくい。
ただ、あそこはそれなりに急な崖を下りる事になる。
・・・それを赤井さんは、私を抱えたまま行ったのか。
「ベルモットは君を、殺したくはないようだ」
入ってきた時と同じことを口にすると、赤井さんはジッと私を見つめた。
・・・それでも分からない。
彼女の行動の意図が。
「とりあえず、君は体を万全にする事を考えろ。彼が戻るまでは我々が君の面倒を見る」
零が、戻るまでか。
今、彼はどこにいて、誰と居て、何をしているのだろう。
・・・一体、どの彼としているのだろう。