第102章 ずっと
「ベルモットは、私の変装をしていたと聞いたけど」
「・・・・・・」
彼女の言葉に頷いて答えると、少し考える素振りを見せて。
「・・・でも、どうして私だったのかしら」
確かに。
それは私も少し疑問に思っていた。
変装するなら他にも・・・。
「どうやらベルモットは、彼女を殺したくはないらしいな」
「!」
突然出入口の方から声がしたかと思うと、そこにはいつの間にか、赤井さんが壁に寄り掛かりながら立っていて。
「どういう事、シュウ」
私がしたかった質問をジョディさんがすると、赤井さんはゆっくりとこちらへと近付いてきた。
「ジョディはここに来る前、何をしていた」
「何って、車がパンクしたからキャメルに交換を・・・って、それはシュウも知ってるでしょ?」
・・・車が、パンク。
「その間、ジョディはそこから動けない事になる。ベルモットはそこを狙った。その上、我々FBIに不都合な事があるとどうなる?」
もしかして、その不都合とは、さっき言っていた犠牲というものだろうか。
できればそれが、人ではないと良いけれど、なんて温い考えが頭を巡って。
「まさか、あのパンクも奴らの仕業だっていうの?」
「恐らくな」
ジョディさんのその言葉を聞いた瞬間だった。
小さい違和感が、大きな悪寒に変わったのは。
「・・・っ」
「君も気付いたようだな」
そう言われて赤井さんへと視線を向けた瞬間、彼から何かを投げられて。
胸に飛び込んでくるように投げられたそれを受け取り手元を見ると、そこには事務所に忘れたはずの私のスマホがあった。
「電波障害を再び起こされたせいで、我々は彼女に気が向いてしまった」
・・・そうだ。
あの時、赤井さんに電話が通じなかったのはそのせいだ。
ジョディさんがパンクの対応をしている間は、変装したベルモットとジョディさん本人が出くわす事は無い。
「そこへ奴らが、手薄になった我々に更なる打撃を与えるのは容易だろう」
インターホンを鳴らさずドアを叩いたのも、きっと私を少しでも動揺させて、手に荷物を持たせないようにする為で。