第15章 謎特急
「じゃあ、よろしく頼むぜ」
そう言って男性は八号車へと向かって行った。私達は先程まで男性のいた部屋に入って腰掛けた。
世良さんだけは立ったまま、暫くカードを見続けていたが。
何か頼もうという園子さんの一言で、車掌さんに紅茶を人数分お願いした。それをのんびり飲みながら、探偵役の人が現れるのを待った。
そんな時、カバンの中でスマホが震えた。メールを告げるバイブ音。
開くと案の定、沖矢さんからだった。
『できれば一度、こちらに戻ってきてください。』
その一文だけだったが、この状況に何か不都合があるのだと悟って。
「あの・・・私・・・」
そう言いかけた時、突然勢いよく扉が開いた。
驚いて目を向けるとそこにはコナンくん達がいて。
「あら、コナンくん。どしたの?」
「レディーの部屋に入る時はノックくらいしなさいよ」
私も突然出てきたコナンくんに驚いたが、それ以上に彼らはキョトンとしていて。
「こ、ここって七号車だよね・・・?」
そう聞いてくるコナンくんに、彼らは探偵役として来ているのだと分かって。
「何言ってんだ?ここは八号車さ」
なんだか小さな探偵を惑わせられたようで口元が緩んだ。大人気ないのは分かっているが、小さくても探偵が戸惑う姿を見るのは貴重な気がして。
腑に落ちない様子でコナンくん達は部屋を出て行った。
「大丈夫かな・・・コナンくん達」
心配そうに蘭さんが呟く。
「・・・コナンくんなら大丈夫じゃないでしょうか」
確証はないが確信はあって。蘭さんに笑いかけながらそう告げた。
そして、暫くしてまた扉が開いた。
やはりそこにいるのはコナンくん達で。
「あのさ・・・ここって本当に・・・」
「八号車だって言ってんでしょ!ガキンチョは部屋に戻って大人しくしてろっての!」
そう言って園子さんはコナンくん達を乱暴に追い出した。ちょっと無理矢理なんじゃないかな、と思いながら苦笑した。
そのすぐ後、今度はゆっくりとまた扉が開いて。
入ってきたのは勿論コナンくん達だが、今度のコナンくんは少し目付きが違った。
「ちょっとあんたね・・・!」
「この部屋ってさ、本当の本当は七号車のB室・・・だよね?」
得意気にそう話すコナンくんは、全てお見通しだと言いたげな顔で。