第102章 ずっと
「顔、赤くない?」
「え?」
顔・・・?
「そう、かな・・・?」
言われて咄嗟に手を頬にやって。
触った所で本当に赤いかどうかは分からないが、その手から伝わる体温の異常さだけは何となく察した。
「・・・そうかも」
コナンくんがつまり何を言いたいのか分かった。
それは照れからくるような赤さではなく、所謂。
「熱っぽい・・・」
流石に熱があればここに立つことはできない。
そう思い、慌ててドアプレートを一旦CLOSEへと変えると、スタッフルームにあった体温計で熱を測った。
「38度・・・」
まさか、こんな時に。
しかも自分で気付けないなんて。
朝から頭がボーッとするのは、このせいだったのだと納得しつつも、午後から来る予定だった梓さんに連絡を取った。
今すぐ向かうと言ってくれた梓さんには、申し訳なさでいっぱいだった。
「・・・大丈夫?」
「うん、意外と平気」
多少の熱っぽさと鈍い頭痛はあれど、不思議と体温計の数値ほどは体調の不良は感じていなかった。
・・・のは、勝手な思い込みで。
「ちょっと疲れてたのかも。今日一日休めば大丈・・・」
そう話す頃には、とっくに体は限界を超えていたらしく。
「如月さん!?」
気付けば壁伝いに、倒れていた。
「大丈夫!?如月さん!」
・・・コナンくんの声は聞こえる。
でも視界が、ぐるぐると回って。
全身に力が入らない。
梓さんに連絡した事で、勝手に安心してしまったのだろうか。
・・・そういえば、零には連絡をし損ねた。
メールだけでも入れておかなければ。
そう考える頃には、ゆっくり意識を手放していって。
徐々にコナンくんの声も聞こえなくなると、真っ暗な闇の中に放り込まれた。
ふわふわと浮くような感覚の中、その真っ暗闇の中で背を向けた誰かが立っていて。
その人が突然どこかへ行こうとするから。
何故かは分からないが、思うように動かない体を動かして、思わずその人の服を掴んだ。
藁にもすがる思い、とはこういう事を言うのだろうか。
何でも良いから、とにかく掴みたかった。