第101章 知って※
「・・・っふ、ぁ・・・ンぅ・・・ッ」
見上げるような体勢でのキスは、少しだけ苦しくて。
でも顔を覆う、彼の冷たい手が・・・心地好くて。
「・・・ベッドに行こう」
名残惜しそうに唇が離れると、囁くようにそう言われた。
いつもなら、歩いてそこへ向かうけれど。
今日は気が狂っているのか、そういう考えが捨てられていて。
強請るようにスッと腕を伸ばすと、彼は一瞬驚いた素振りを見せたが、次の瞬間には優しく微笑んだ。
これは所謂、連れて行ってほしいという合図で。
「ひなたからも甘えてくれるんだな」
そう言って私を抱き抱えると、真っ直ぐベッドへと向かい、静かにそこへ私を下ろした。
その上に跨るように私を見下ろすと、彼は暫くの間、ただ静かに私の目をジッと見つめて。
「僕からも一つだけ、お願いしても良いか」
「!」
その言葉に一瞬、今日の沖矢さんが重なった。
・・・でもこれは、私が悪い。
先にそれを言ってしまったのは私だから。
そして、彼から言われたお願いは。
「待て、とは・・・言わないでくれ」
・・・そんな事。
なんて事は、思わなかった。
正直そのお願いは。
「と、咄嗟に出ちゃうだけだから・・・意識はしてないから・・・」
だから。
言わない、という約束は・・・。
「僕はずっと、待っているつもりなんだ」
「?」
零が、待っている?
何を?
でもそれを問うことは。
「ンぅ、く・・・っん・・・」
再び口を塞がれて、できなくて。
まさに今、待ってと言いたかった。
「れ・・・っふ、ぅ・・・ンっ」
舌が、逃げても逃げきれない。
追われて、捕らえられて、絡められて。
何か言う隙を、与えられない。
「っん、あ・・・や・・・っ!」
唇が離れても、首筋を伝って耳へと向かう。
言葉を吐くことを、体も許さない。
「れ、い・・・っ」
彼の名前を呼ぶのが精一杯。
でも今は。
それだけできれば十分なのかもしれない。