第101章 知って※
「・・・なんだったんだろうね」
「・・・・・・」
白々しかっただろうか。
電話を切った後、独り言のように呟いた言葉へ、零は何も言わなくて。
それに僅かな緊張感を抱いてしまい、小さく息を飲んだ。
ただ静かに前を向きながら運転をする彼を再び横目で見ては、申し訳無さも同時に覚えた。
・・・もしこういう事が起きた場合、都合が良い時は「うん」から始まる返事をし、都合が悪い時は「大丈夫」と返事をする。
コナンくんとは、そう決めていた。
まさかつい最近決めたこの合図を、早速使うことになるとは思っても見なかったけど。
「もしまた彼から電話があったら、すぐ僕に言ってくれ」
暫くして、零からようやく出た言葉がそれだった。
「・・・分かった」
流石に気にするか。
私だって、気にする。
何なら、今だって気になっている。
彼が今、何を伝えようとしてきたのか。
ーーー
「・・・大丈夫か」
「え・・・何が?」
セーフハウスに戻り、入浴や食事を済ませると、椅子に座って深く息を吐いた。
それを見た彼から、突然そう問われて。
その質問に心当たりが無く、隣に立っている彼に目を見開ぎながら見上げ、首を傾げた。
「電波障害や僕の事とは別に、何かあったのか」
質問を重ねながら、彼の指が頬を滑った。
その瞬間、体に電気が走ったような感覚を感じて。
今日、頬に触れられるのは零で二人目だ。
・・・だけど、触れられて感じるものが、もう一人とは圧倒的に違う。
「どうして・・・?」
心臓が・・・痛い。
痛い程に、速さを増していく。
彼が触れるだけで、こんなにもドキドキする。
「少し、元気が無いように見えたから。・・・僕が原因だったらすまない」
彼はいつだって鋭い。
私の変化にいち早く気付く。
・・・でも私は、彼のそういった変化に、ちゃんと気づけているのだろうか。
「ちょっと、あったかも。でも、零の事じゃないよ」
本当の事は言えないけど。
少しくらいの弱音は、許されるだろうか。