第101章 知って※
「大丈夫だった?」
「・・・あぁ」
今はそれ以上、何も聞かない方が良いだろう。
聞いても彼が困るかもしれない。
FBIも動いているのだから、問題はないだろうから。
「今日はセーフハウスに戻る?」
「・・・そうだな。仕事は明日に回してくれて構わない。今すぐ戻ろう」
ということは、まだここに居ない方が良いのか。
または、セーフハウスの方に元々用事があったのか。
「すぐ、準備するね」
いつも通りの雰囲気に気をつけて。
そう、声を掛けるが。
「零?」
彼がその腕を解くことはなくて。
「もう少し、このまま・・・」
解く所か、強くなる一方で。
「・・・うん」
声から不安に似た感情が伝わってくるそれに、大丈夫だよと伝えるよう、静かにゆっくりと抱き締め返した。
ーーー
「本当にすまなかった」
「大丈夫だって」
車に乗ってセーフハウスへと向かう最中、彼は何度も声を荒らげた事に謝罪をしてきて。
こういう所は、本当に律儀だ。
「確認しなかった私も悪かったから」
メールが送信できていないことくらいは、私でも分かったはずだ。
その確認を怠ったのも悪い。
でも、彼があそこまで取り乱す理由が、まだよく分かっていなくて。
単純な心配・・・には見えなかった。
思い違いなら、良いのだけど。
「・・・どうやら、あのマンションから半径数十メートル圏内で、電波障害が起きていたらしい」
「!」
ぼんやりと、車の進む先をただ真っ直ぐ見つめていると、彼は突然事情を話始めた。
まさかその話を彼からしてくれるとは思わず、前に向いていた視線を、運転する彼へと向けた。
マンションから?
それも、数十メートル圏内で?
「じゃあ故意だとすれば、マンションに居た誰か・・・もしくはどこかの部屋を対象としてたってこと?」
そうでないと、あまりにも距離が狭過ぎる。
それに、誰か・・・なんて言ってみたものの。
対象となる可能性が高いのが誰かなんて、もう分かっているようなもので。