第101章 知って※
「ひなたっ!!」
廊下からの扉を強く開けられると、そこには零の姿があって。
そして何故か、その隣には風見さんの姿もあった。
「・・・零?・・・と、風見さん?」
息を切らし、肩を大きく上下させながら私を見つめる二人を、目を丸くして見つめた。
「・・・ッ」
数秒の間の後、零が私に向けたことのないような表情で近付いてきて。
・・・でも以前、似たような表情を見た覚えがある。
これは、風見さんを・・・。
「何故連絡を入れなかった!!」
叱っていた時の、表情だ。
「い、入れたよ・・・っ!」
肩を掴み、珍しく声を荒らげて私に怒りを向ける彼に、思わずこちらも僅かに声を張って言い返してしまった。
でも、遅れる旨も、ここに居ることも、全てメールで彼に連絡したのは間違いない。
これについては、怒られる覚えが無い、から。
「では何故、電話に出なかった!」
・・・電話?
「か、掛かってきてないよ・・・」
一応、こういう状況にはなっているから。
スマホは肌身離さず持ち歩いている。
確認の為、ポケットからそのスマホを取り出すと、零はそれを奪うように私の手から取り上げて。
暫くそれを操作してみせると、彼はこれまた珍しく、私の前で大きく舌打ちをした。
「風見、至急調べてほしいことがある」
「は、はい!」
零は私のスマホをテーブルに置くと、風見さんの方へと向かって行って。
何か指示を出すと、風見さんは私に一礼をして事務所を後にした。
「・・・ひなた」
「な、何・・・?」
まだ、怒られるような事をしているのだろうか。
走馬灯の様に最近の出来事を思い出すが、心当たりは無くて。
いや、そもそも、彼に怒られている理由に覚えがないのだが。
「声を荒らげて、すまなかった」
少し冷静さを取り戻したのか、さっきよりは落ち着いた様子で、私にそう言った。
「すぐ戻る。ここを動かないでくれ」
「わ、分かった・・・」
何が何だか分からないまま、一度嵐は過ぎ去って。
零もどこかへと去った後、暫くは唖然として立つ以外の事はできなかった。