第100章 ゼロで※
「・・・それは」
どういう意味で、だろう。
「何処かに身を潜めさせることも考えた。だがそうすれば、僕の目は届いても、手が届かない」
・・・まさか。
「危険だとは分かっている。でも、僕の傍に居てほしい」
まさか、本当に。
「僕が、必ず守るから」
そのままの、意味なんて。
「大丈夫なの・・・?」
完全に足でまといの私を。
戦場に連れて行くなんて。
「本当ならば御法度だ。民間人を巻き込むなんて考えられた物じゃない」
それは、そうだろう・・・な。
「でもひなたは完全に無関係では無い。一応、連れて行く理由もある。だがひなたが嫌なら、今一度考えを・・・」
「わ、私は・・・っ」
私の意見なんて、有って無いようなものだ。
「私は、零の傍にいるって誓った」
危険なんて今更だ。
ずっと危険と隣り合わせなのだから。
ここ最近が、平和過ぎたんだ。
「最後まで、傍に置いて」
赤井さんと取引が成立する、その時までは。
「・・・ありがとう」
私の返事を聞いてようやく、零がいつもの零に戻ったような気がして。
少し和らいだ表情に、こちらも少し口元を緩めた。
「近い内に指示する事を伝える。それまではいつも通りに過ごしていて構わない」
いつも通り?
「・・・ポアロも?」
「ああ」
多少は制限があるのかと思っていたけれど。
彼が言うのなら、良いのだろう。
「ただ、一つだけ約束してくれ」
そう改まった様子でこちらを見た時、その目から伝わってきた。
彼の、言いたい事が。
少しずつだが、何となく分かってきている気がする。
「何かあればすぐに」
「大丈夫、連絡する」
まだ全部は分からないけど。
少しずつ分かっていけたら。
・・・いけたら、良いのに。
今の私に、少し先の未来でも話ができないのは・・・辛い。