第100章 ゼロで※
「ひなたが他の男と話していれば、それだけでひなたを失った気になってしまう」
・・・もしかして、今日のポアロでの様子を見ていたのだろうか。
「案外、女々しいだろ」
「そんな事ない。私だって・・・」
零がポアロのお客さんである、女子高生に騒がれているのは、正直少し嫌だ。
「零を取られた気になる事もあるよ」
彼女達に優しく勉強を教えたり、優しく微笑んだり、それは営業で仕方ないとはいえ、少し・・・いや、かなり嫉妬する。
本当は私が彼女なのだと言いたい。
「・・・ポアロか?」
「うん」
そう問われると同時に、彼の目を覆っていた腕が退かされて。
身に覚えがあるということは、あの行動は確信犯じゃないかと口を僅かに尖らせた。
傍から見れば、これはただの惚気だ。
でも私達にとっては、かなり真剣な問題で。
「僕はひなたを不安にさせない為に、これを贈ったつもりなんだが」
そう言って彼は、私の首にかかる鎖を伝って、そこに繋がる指輪を服の隙間から取り出してみせた。
「・・・分かってる」
でも、それとこれとは別で。
いつかこれが優越感にでも変われば良いのだけど。
「零の不安は、それだけ?」
話を戻すように尋ねると、上に乗っていた私を退かして彼は向かい合うように座った。
いつも真面目に話す時、彼はこうする。
目を見て、私に体を向ける。
如何にも、警察官である彼らしい。
「・・・近々、組織へ本格的に仕掛ける。ひなたに危険が及ばないとは言い切れない」
毎回、こうして冷静にいられるのは赤井さんのおかげだが、それが良いと捉えられるかは、今となっては正直複雑で。
「だから」
またポアロも休まなければいけないだろうか。
もしかすると、やめなくてはいけないかもしれない。
きっと赤井さんの言葉通り、私は身を・・・
「何があっても、僕の傍を離れるな」