第100章 ゼロで※
「なら、良かった」
「え、あ・・・コナンくん・・・!?」
たったそれだけの会話を済ませると、コナンくんは足早にその場を離れてしまって。
「じゃあね、如月さん!また来るね」
扉を開けながらこちらに手を振ると、彼はあっという間に姿を消した。
静かに閉まっていく扉を見つめては、何だったのだろうかと呆然としてしまって。
「彼も貴女が心配なんでしょうね」
「え・・・?」
彼、も・・・?
「どういう意味ですか」
「そのままの意味ですよ」
コナンくんに心配されるようなことがあっただろうか。
ここ二ヶ月は本当に穏やか過ぎる日を過ごしているけど。
「作業をしながら、自然に監視カメラへ背を向けてください」
洗ったコップを拭きながら考え込んでいると、沖矢さんは突然そう言ってきて。
一瞬、疑問符は頭に浮かんだものの、何故かと聞いてもどうせ答えは返ってこないのだから。
作業をするふりをしながら、彼の言う通り監視カメラに背を向けた。
「君の彼も、我々も、奴らを潰す為にこれから大きく動き出す」
「!」
声は沖矢昴のまま、彼は赤井秀一として話を始めた。
「君は俺達にとって諸刃の剣だ。武器にはなるが枷にもなる」
・・・枷にはなっていると思うが、武器になるとは思っていない。
実際、FBIに利益をもたらしているとは思えない。
だから赤井さんが私のことを協力者として扱うことに、未だに違和感が残っていた。
「最後の戦いになるかもしれない。だから君には身を潜めてもらいたい」
・・・それは、そうだろうな。
私が巻き込まれれば、公安にもFBIにも都合が悪い。
「・・・透さんに言われれば、そうしますよ」
この辺りで、監視カメラに背を向けろと言われた意味が分かった。
零や公安がこの映像をチェックしているかもしれない。
口の動きから会話を悟られないよう、そうさせたのだと。