第100章 ゼロで※
「・・・ひなた」
「っ・・・」
少し、切羽詰まったような苦しさ混じりの声。
そんな声を吐息混じりで囁かれて、体が反応しない訳が無い。
「れ・・・っ」
呼び掛けた名前は、喉の奥でグッと詰まった。
それは私の意思では無く、彼が突然強く私を抱き締めたからで。
「・・・っ、零・・・くる、し・・・」
息すら困難になる程。
それは固く、強過ぎるものだった。
「すまない。ひなたが可愛くて抑えが効かないんだ」
今日の彼は何もかも突然過ぎる。
歯の浮くような台詞はいつもの事だけど。
いつも以上に・・・突拍子も無い。
「・・・零」
抱き締め返したいのに。
後ろ手に縛られているせいで、それが叶わない。
でもそれ故、いつも以上に心臓同士が近い気がして。
心臓から心臓へ、その音が伝わってくるようだった。
「今日は優しくできないからな」
先に宣言されてしまった。
それは今までにも何度かあった事だが、ここまで切羽詰まった様子で言われるのは初めてだった。
それが私の余裕を、更に無くしていって。
「いっ、ぁ・・・ぁあッ!!」
彼は体を抱き締めていた腕を徐ろに解くと、静かにジッと私を見つめた。
それに気を取られていると、突然彼の指が私のナカを埋め尽くした。
「ッ、や・・・」
彼に手を押さえ付けられているのとは、違う羞恥があって。
その時とは違う距離感、酷い背徳感、彼の雰囲気、それらが歪に組み合わさり、羞恥へと現れてくる。
「・・・っあァ、い・・・ぁっ!」
そこへ与えられる快楽。
それも、敏感な所を狙い過ぎた、彼らしい意地悪なやり方で。
「そこ・・・っ、だめ・・・!」
彼の指が、奥に。
その指を動かされると、グチュリと響く粘着質な音。
この音にいつも強い背徳感を感じるのは何故なのだろうか。
「さっきまでの素直さはどうした?」
・・・余裕こそ感じられないが、何処と無く楽しそうだ。
声だけでそれが感じ取れる程、彼の感情は珍しく表に出過ぎていた。