第100章 ゼロで※
「こ、これは知らなくても良い・・・っ」
「では、どういうひなたを知ってほしい?」
それは・・・ゆっくり、その内に。
のんびり、色んな面を知っていって欲しい。
なんて呑気な言葉が脳裏を過ぎったけれど。
私たちに、明日がある確約なんて無かったんだ。
「・・・っ」
「ひなた」
促されるように彼が呼ぶ名前が、固くなっている心を溶かしていく。
「・・・れ、零が・・・」
今素直にならなくてどうする。
言いたい事を言っておかなくて・・・どうする。
「零が知りたい私なら・・・何でもいい」
決して投げやりになった訳では無い。
投げやりになっているのなら、こんなに顔は熱くならないはずだから。
「・・・じゃあ、教えてくれ」
「ひぁ・・・ッ」
そう言った彼の唇が、鎖骨の辺りに触れて。
そこから伸びてきた舌が、ゆっくりと首に向かって舐め上げた。
「これからひなたが、どんな表情をするのか」
・・・ムズムズする。
触れてほしいような、そうでないような。
見ていてほしくも、見ないでほしい。
そんな天邪鬼な感情の中、彼の手が胸の膨らみに添えられ、蕾に舌を這わされた。
「んっ、ン・・・ッ!」
生温かい感触が、脳を直接刺激するようで。
彼の冷たい手も、それだけで快楽と変わった。
「ふ、・・・ぅ、あぁ・・・ッ」
口を塞ぎたいのに。
塞ぐための手が、塞がれているなんて。
たった、それだけなのに。
これ程までに羞恥を感じ、それに欲情しているなんて。
・・・はしたない。
「ひなた」
・・・だめ。
そんな声で呼ばないで。
「っ、んぅ・・・」
そんなキス・・・しないで。
これ以上、甘さなんて与えられてしまったら。
本当に溶けて無くなってしまいそうで。