第99章 生きて※
「やっ、ぁあ・・・ッああぁ・・・!!」
・・・堕ちる。
奥底、深くへと。
その瞬間は、息が吸えなくて。
苦しいけれど、幸福感には満たされていて。
・・・その裏に、強い背徳感もあって。
「もう少し・・・耐えてくれ」
「えっ、や・・・待っ・・・ッ!!」
流石にもう耐えられそうにない。
けれど、彼の動きも止まりそうになくて。
互いに握る手の強さが最上級になった時。
彼の欲望で私のナカを満たされて。
でもそれはほんの始まりにしか過ぎなかった。
会えなかった、会わなかった期間が埋まる訳でも無いのに。
互いの表情から目を離さない体勢のまま、本能の赴くまま、欲望に忠実に。
何もかも空っぽになるまで、一つになり続けた。
ーーー
「・・・水族館?」
あれから1ヶ月近くが経ったある日、突然彼は事務所に帰って来るなり、話を切り出した。
この1ヶ月、会える時間こそ少なかったものの、比較的穏やかな日々を送っていた。
事務所とポアロの仕事を行き来するだけで、組織の話も持ち込まれる事の無い、穏やか過ぎる日々だった。
「ひなたが嫌なら、別の場所にしよう」
「そ、そんな事ない・・・っ!」
それは突然の誘いで。
所謂、デートの。
こんなにも堂々と誘いを受けるのは久しぶり過ぎて、思わず戸惑ってしまった。
「じゃあ、来週の日曜日は空けておいてくれ」
「わ、分かった・・・」
その時に向けられた彼の笑顔が優し過ぎて。
不意打ちのそれに胸をキュッとさせては、彼から受け取ったスーツで半分顔を隠した。
その時の感情は正直な所、嬉しさ半分、不安半分で。
それは単純な誘いなのか、それとも別の意図があるのか。
余計な思考が働いてしまって。
「!」
そう少し上の空になっていると、彼はスーツを持つ私の手を下げ、徐ろに軽い口付けをしてみせた。