第99章 生きて※
「・・・っ、ん・・・」
下唇を噛んで、無意識に声を我慢して。
別に声を上げたって、聞こえるのは彼だけなのに。
・・・いや、彼だけだから。
「ッ、・・・」
耳朶を口に含まれると、中で彼の温かい舌が触れて。
軽く吸われると、ゾクッという感覚と共に、リップ音が鼓膜を響かせて。
「零・・・っ」
耳朶から、徐々に上へ唇と舌が移動する。
この妙な感覚に、どうにも弱い。
ムズムズして、くすぐったくて、我慢できなくなる。
「どうした」
「・・・っや・・・!」
だから、そんな所で囁かれでもしたら。
無条件で体が跳ねる。
「も、耳・・・っ、だめ・・・」
早くも息が上がり、心臓が今にも壊れそうで。
せめてベッド横の薄明かりが消えていれば。
互いの顔が見えなければ、こんなにも緊張しなくて済むのに。
「ひなたの我慢している顔も、悪くない」
そう言うと、彼は絡ませていた指を解き、私の手首を片手で一つに纏めると、私の頭上でベッドへと押し付けた。
「待っ・・・、灯り・・・ッ」
「消したら見えないだろう」
片手で纏められていた辺りから気付いてはいた。
彼のもう片方の手が、服の裾から素肌を這い上がってきていたことには。
でも、どうする事もできなくて。
顔を覆うことも、彼の手を止めることも。
「ン、ぅ・・・!」
あっという間に彼の手が胸の膨らみに添えられ、下着の隙間から指を滑り込ませた。
少し冷たいその感触が、心地好くて。
心臓に近いそこに彼の手が来る度、その音を聞かれるのが酷く恥ずかしかった。
「その顔・・・そそられる」
「っ、見ちゃダメ、だって・・・っ」
・・・私も。
その、私で欲情している彼の顔に、そそられてしまう。
はしたなく思いつつも、相手が彼なのだから仕方ないと、開き直ってもいて。
「あ・・・ッ、ゃ・・・!」
下着がズラされ、蕾に彼の指が触れた。
こうされる度、いけない事をしている背徳感に襲われたが、そう感じていられるのも・・・今だけで。