第99章 生きて※
「本当は、タガが外れそうで僕が怖いんだ」
・・・それは、少し分かる気がする。
「一度は、もう触れられないと思っていた恋人が、目の前にいるんだ。少しで我慢できる訳無いだろ」
私も、いつ会えるか分からなかった彼が目の前にいるだけで、おかしくなりそうなのに。
キスだけで、こんなに高ぶっているのに。
でも、だからこそ。
「・・・ズルい」
互いに我慢はしていたのに、私から言わせるなんて。
私だけに、求めるような言葉を言わせるなんて。
「悪かった」
ムッと軽く口を尖らせると、彼は笑みを零しながら謝った。
そして、優しく顔にかかる髪を指で払い避けて。
「自分に負担がかかる事は考えなかったのか?」
「?」
・・・負担?
彼との、行為が?
「そんなの、感じた事ないよ・・・?」
彼が触れてくれるだけで、幸せなのに。
何を負担に思うのか。
キョトンとしながら彼の目を見れば、今度は額同士をくっつけられて。
「僕も、同じだ」
・・・その言葉が、今の私にとってどれ程嬉しかったか。
こう感じてしまうと、はしたなくは思えたが、それでも喜びを感じられずにはいられなかった。
「ひゃぅ・・・ッ」
そんな喜びを噛み締めている中、顔が少しズラされ私の耳に彼の唇が触れて。
思わず、情けなく声を上げてしまった。
「・・・可愛い」
「み、見ないで・・・」
熱い。
顔も、全身も。
それを手で、腕で、何かで、隠したいのに。
両手に絡んだ彼の指のおかげで、何一つできなくて。
「僕しか見られないのに、僕が見なくてどうする?」
彼にしか見せられないような顔だから、恥ずかしいのに。
こんな、貴方に溶けてしまった顔なんて。
「もっと、見せてくれないか」
「・・・ッ」
ただでさえ敏感な耳が、異常なまでに過敏で。
彼の吐息が、声が、届く度、握られている彼の手をキュッと握った。