第98章 金輪際
「で、如月さんはここで何を?」
秘密主義な割には、追求心へはすぐ火がつく。
捕まったら最後、答えを出すまで追求するのだろう。
「・・・秘密」
だったら、追求してみてほしい。
今のこの状況は、何なのか。
私にもよく分かっていないこの状況に、彼なりで良いから答えを出してほしかった。
「まさか、本当に・・・?」
安室さんと何かあった?と聞いてくるコナンくんに、あの夜の事件は耳に入っていない事に少し安心した。
まあ、あの男はずっと前に死んだと、彼には思わせているのだから当然か。
「どうだろうね・・・?」
僅かに微笑んでみせれば、少し焦る様な表情を見せる彼に、まだまだその辺りは子どもなのだな、と実感して。
「その話、僕にも詳しく教えて頂けませんか?」
そして、その笑顔は一瞬で凍りついてしまった。
耳元で静かに囁かれたその声は、望んでいる時ほど嫌な状況で耳にする。
そして、必ずと言っていい程、傍には沖矢さんが居て。
まるで、いつもどこかで見ているように。
「・・・透、さ・・・」
「あー!安室さんだ!」
こちらが青ざめていると、少し離れた場所にいた歩美ちゃんが、透さんの方へと駆け寄っていった。
「何してるのー?」
「ちょっと調査に来ているんだ」
こういう時の子どもの無邪気さというのは、救われつつも首を絞められていく。
何も、やましい事は無いはずなのに。
「探偵のお仕事ですか?」
「まあね」
光彦くんの問いに彼はそう答え、ゆっくり私と沖矢さんを同時に視界に入れて。
「とある人の・・・浮気調査に、ね」
痛い。
心臓が、痛い。
脈を打つ度に、太い針が刺さるようで。
「その調査は、終わったのですか」
透さんの視線を受け取った沖矢さんが、私の隣に並びながら彼に尋ねた。
できれば、今は会話を控えてほしいのだけれど。
「いえ。残念ながら、もう少し掛かりそうです」
そう話す彼の目は、鋭くキツいものになっていて。
重苦しい空気が肺に入る度、血の気は引いて今にも倒れそうになった。