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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第98章 金輪際




「何の冗談ですか」

腕を・・・組めと?

これは何かの作戦なのだろうか。
それとも、単にからかわれているのだろうか。

「・・・・・・」

尋ねても、返ってくるのは彼の笑顔だけで。

暫くそれを睨んでみたが、返事をくれる様子は無かった。

「・・・行きますよ」

結局、沖矢さんのそれは無視をして歩みを進めた。

・・・本当に、何を考えているのか分からない。

分かりたくも・・・ないが。

それから特に目立った会話は無いまま、建ち並ぶ店の周りを歩いて回った。

視線は・・・感じる。
カフェにいる時よりも強いものが。

その存在を気付かされたせいかもしれないけれど。

でも、上手くその姿が捉えられない。
どこから見ているのか、どんな姿の人間なのか、一切。

「どうやら」
「?」

顔だけが強ばっていく中、あれから私に指示をして来なくなった沖矢さんが突然口を開いて。

「人数が増えたようですね」
「・・・え?」

人数が増えた?

「だ、大丈夫なんですか・・・それ」

もしかして・・・増えたのは私を狙って自殺した男の関係者では。

「問題ありません。どちらも、害は無いですよ」

どちらも、ということは・・・尾行した人数は増えているが、それぞれ私を尾行する理由は違うということか。

若しくは、理由は同じだが仲間では無い、か。

「ただ、予定が少々狂いました。仕方ありませんので、一気に巻き上げましょう」
「え、あ・・・沖矢さ・・・!?」

そう言うなり、彼は私の腕を掴んで突然走り出した。

咄嗟の事で足を軽く縺れさせながらついて行くと、突然路地裏へと入り込んで。

「・・・っ」

その奥に行き着く手前、地下へ降りる薄暗い階段を駆け降りると、背中を壁へと付けられた。

そこへ沖矢さんが私を隠すように壁へと張り付くと、静かに息を潜めた。

「・・・・・・」

近い。
近過ぎる。

おまけに、静か過ぎる。

走ってきたせいもあるが、色んな意味で心拍数が上がってしまって。

その音が聞こえてきそうで、聞こえてしまいそうで。

今はただ、降りてきた階段の上の方を見つめる彼の横顔を、息を殺してただ静かに見つめることしかできなかった。



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