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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第14章 出発前




「・・・透さん?」

ふと彼が部屋にいないことに気付く。
その何とも言えない喪失感が、心にぽっかりと穴を開けるようだった。

手にも体にも残る彼の存在に、鼓動が早くなっていく。

会いたい。

昨夜会ったばかりどころか、体を重ね合わせたのに。そんな醜い欲ばかり生まれてくる。

とにかく今は仕事へ向かう準備をしなくてはと、鈍い動きしかできない体に鞭を打って立ち上がった。

その時にふと目に入った、机に置いてある紙袋の存在。

昨日寝る前にこんなものは置いてなかったような、と近付いて手に取ると、紙袋の下からメモが一枚出てきて。

『貴女に似合うと思って』

そう一言だけ書いてあった。

透さん、字まで綺麗なんだな・・・なんて思いながら、紙袋の中身を取り出してみると。

「こ・・・これって・・・」

それはいつだったかショッピングモールに一人で行った時、たまたま手に取り見ていたあのワンピース。

透さんがそれを知っているはずはない・・・偶然なのだろうか。

いや、あの時から透さんが私の後を付けていたとしたらありえなくはないか・・・、と自分なりに考えを巡らせた。

それでも透さんが私の為に買ってくれた物ならば、嬉しさこの上なくて。
飛び跳ねるような気持ちでワンピースを抱き締めた。

透さんからのメモと一緒に紙袋へしまい込み、鼻歌を歌いながら支度を始めた。

準備を終えて事務所を出る前に、透さんへいつもの連絡をする。

『おはようございます。これから事務所を出てポアロに向かいます。それと・・・ワンピース、ありがとうございました。大事にします。』

そう打って事務所を後にし、数分後。
メールの着信を告げるスマホに目をやると。

『おはようございます。体は大丈夫ですか?そのワンピース姿が見れることを楽しみにしてます。』

その返事でまた浮かれてしまって。

私達は付き合っている訳ではないと思う。
けれど体だけの付き合いという訳でもなくて。

お互いそういうものではないというのは、何となくの空気感で分かっていた。

あくまでも今は上司と部下で。
それを前提とした関係ということは弁えているつもりだった。



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