第97章 最終的
「彼は今手が離せないようなので、代わりに僕が貴女をお守りさせて頂きます」
いや、今はそんな事が聞きたいんじゃなくて。
「!」
そう勢いで沖矢さんに突っ掛かろうとした時、私に何も言わせないまま彼は目の前にティーカップを差し出して。
「話は落ち着いてから。良いですね?」
聞きたい事は分かっている。
沖矢さんの目は、何も言わなくてもそう言っているのが分かった。
渋々差し出されたティーカップを受け取ると、ミルクで濁った紅茶にゆっくり口を付けて。
落ち着き始めた頃、自分が寝ていた場所がソファーだったことにも気がついた。
それくらい、私は周りが見えていなかったのかと思い知らされた気がした。
「・・・・・・」
飲み終わるまで、向かい側のソファーに腰掛ける沖矢さんは、何も話さなくて。
互いに中身を飲み終えたティーカップを机に置いた時、ようやく沖矢さんは口を開いた。
「さて、何から聞きたいですか」
・・・そう聞くということは、私が聞きたい事は全て知っているということで。
まあ、そんな事は薄々分かっていたけど。
「できれば・・・赤井さんがいいんですけど」
ちゃんと、FBIとしての彼に、話を聞きたい。
そう目でも訴えると、彼はゆっくり首元の襟をスッと下ろして。
変声機に手を掛けると、再び口を開いた。
「君が望むなら、そうしよう」
・・・沖矢さんとは違う緊張感。
それはどこか空気をピンッと張り詰めさせて。
「単刀直入に聞きます」
彼に直接確認したい事だけを問うことにした。
「あの男を撃ったのは・・・赤井さんですか」
肘掛に肘を置き、曲げた指の甲で頬杖をつくように姿勢を作ると、彼の顔からはいつもの笑顔が消えた。
「その質問の仕方なら、答えはイエスだ」
・・・ということ、は。
「撃ったのは・・・二発ですか」
あの男は小屋に居た時、二発の銃弾を体で受けている。
あの場に居た時も、撃ったのは赤井さんではないかと考えていた。
でも、これに対しての質問がノーなら。
・・・ノー、だったら。