• テキストサイズ

【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第97章 最終的




「ひなた、立てるか・・・っ」

零の声は聞こえる。

けど、思考能力も動く気力も、何もかも無くしてしまった体は、自分の意思ではどうする事もできなかった。

「・・・っ」

彼は、ただ呆然とする私を抱き抱えると、すかさずその場を離れて。

コンテナ同士の狭間に身を詰めると、そこにもたれさせるように私を置いた。

「・・・ひなた」

彼の指が、頬に触れて。

・・・冷たい。

その感覚が伝わってきた時、わざわざ手袋を外して触れてくれた事に気付いた。

「透さん・・・」

本当は・・・本当の彼の名前を呼びたかった。
でも、何となく今はいけない気がして。

申し訳なさ、やるせなさ、悔しさ、が入り交じった表情で彼を見れば、彼もまた複雑な表情をこちらに向けて。

「・・・すまない」

彼が謝る必要なんて、どこにも無いのに。

と、思うには少し早過ぎたようで。

「ンッ・・・」

突然、彼にハンカチの様なものを口元に当てられて。
鼻も同時に塞がれたせいで、そこに染み付いた嫌な匂いを吸い込む他無かった。

・・・やはり、こういう事は慣れるものじゃないな。

そう思いながら、視界が段々と小さくなっていくのを感じた。

最後に見えたのは、彼の今にも泣きそうな表情で。

・・・そんな顔しないで。

そう思いながら、私は彼の手によって、薬で眠りについた。


ーーー


「・・・っ」

次に目を覚ました時、一番に感じたのは紅茶の香りだった。

「おや、目が覚めましたか」

・・・そして。

「沖矢、さん・・・?」

目の前には、思いがけない人物。
辺りをよく見れば、ここは工藤邸で。

「丁度紅茶が入った所です。飲まれますよね?」

何事も無かったかのように、沖矢さんは私に尋ねてきて。

・・・何事も。

「と、透さんは・・・っ」

そう、あんな大きな事があったのに。





/ 1935ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp