第97章 最終的
「ど・・・して」
状況が飲み込めない中、声を震わせながら男に尋ねた。
「・・・何でだろうねえ」
男は一言そう呟くと、口から血を吐いて。
・・・胸を、撃たれている。
それは明らかに急所だった。
「似ているから、かな・・・」
男が話す間、呼吸の音がどんどんと変わっていく。
きっと、肺の辺りを撃ち抜かれている。
でも、どこから、どうやって。
・・・誰が。
「俺が、大嫌いだった・・・人に」
「・・・大、嫌い・・・」
男の言葉を繰り返すと、何故かフッと優しい笑みを向けられて。
「ああ・・・嫌いだったよ。・・・俺より先に・・・死んだやつ、なんて」
・・・ダメだ。
流石にこの傷は深傷だ。
それは素人でも分かった。
きっと本人も、分かっているはずで。
でもまだ何か方法があるかもしれない。
助かる方法が、あるかもしれない。
その可能性がゼロでは無いなら。
・・・私、は。
そう、判断したのに。
「!?」
・・・・・・。
・・・嘘だと、思いたかった。
まさか、そんな事が起こると思わなくて。
ただ目を見開いて。
静かに倒れた男を見つめた。
「ッ・・・」
・・・撃たれ、た。
呆気なく、こんな所で。
まだ、聞かなきゃいけない事があるのに。
折角、ここまで追い詰めたのに。
撃たれて、しまった。
「・・・っあ・・・ッ」
今度は、頭を。
目の前で。
何も、できなかった。
今もただ、静かに目の前で倒れた男を、見つめることしかできなくて。
「ひなた!」
私の名前を呼びながら駆け寄ってきた彼に、強く抱き締められて。
「見るな・・・っ」
力の入らない体を、ただ小刻みに震わせて。
何も考えられない頭の中は、真っ白になっていた。
「・・・ッ」
何も、できなかった。
・・・何も。
できなかった。
なにも、なにも。
「できな、かった・・・っ」
すぐ側にいたのに。
何かできたかもしれないのに。
決して手の届かない所に・・・。
・・・逃がしてしまった。