第97章 最終的
「・・・・・・」
出血が酷い。
彼らの後ろを歩きながら、地面に落ちるそれに目をやって。
独特な鉄の匂いが鼻を刺し、顔を歪めた。
「安心してください、あの世へは行かせませんから」
作業小屋のような場所から外へと出ると、彼は男にそう言い放って。
これはもう、彼が警察関係者であることを男に明かしているのだろうか。
「これから、あの世へ行けなかったことを後悔させてあげますよ」
「ふ・・・っ、じゃあ僕は、生かした事を後悔させてあげようかな」
・・・意外と、この男もしぶといようだ。
出血はそれなりでも、彼の言う通り、あの世へ行くことはなさそうで。
「ひなた、すみませんが後部座席を・・・」
男の車へと戻って来ると、その一歩前で一度立ち止まり、バーボンは私の方へと振り返りながら何かを言いかけて。
「・・・?」
でもほんの二、三秒、沈黙を作ったかと思うと、彼の表情が一変した。
「!?」
次の瞬間、パァンッと大きな破裂音が辺りに響いて。
何が起きたのかは分からない。
でも今が良くない状況だということは、彼の表情から十二分に察した。
「ひなた!伏せろ!!」
急な命令に、理解はできたのに咄嗟の事で体が動かなかった。
伏せる。
たったそれだけの簡単な動作なのに。
できなくて。
「・・・ッ!!」
気付けば、地面に倒れていた。
「ひなた!」
零の叫ぶ声が聞こえて。
でも返事はできなくて。
痛い。
・・・いや、痛い・・・のだろうか。
「っ・・・」
確かに痛みはあるが、でもそれはほんの僅かなもの。
倒れたと思った体も、実はそうでは無かったようで。
本当は。
「・・・ッ、や・・・」
倒されていた。
「・・・大丈夫・・・子猫、ちゃん・・・」
目の前で膝をつき、血塗れになっている、情報屋に。