第97章 最終的
「・・・君、何やってるか分かってるの」
「喋らないで・・・っ」
男が喋る度、傷口から温かいものが流れ出る。
今はこれをできる限り抑えないと。
・・・本当はこんな事したくない。
けど、この男を死なせてはいけない。
男を撃ったのが誰かなのは、この際置いておいて。
とりあえず、零を呼ばなければ。
「透さ・・・」
そう声を掛けようとした時には、既に彼はいつの間にか隣に居た。
「大丈夫です、急所は外してあるはずですから」
急所は外してある・・・はず?
どういう事だろう。
彼は、この男を撃った人間が誰なのか知っているのだろうか。
・・・考えられるとすれば、警察関係者。
でもそれは日本の、とは限らなくて。
「とりあえず、ここから運び出します。ひなたは、あるだけの布を持ってきてください」
「は、はい・・・」
冷静だ。
意外にもそうしている彼に、こうなる事が分かっていたのではないのかと思った。
バーボンが肩を貸し、男が持っていた銃をしまい込んでいる様子を目で追いながら、棚等に置き去りにされていた布類を持てるだけ持って。
「・・・意外と汚い手を使うんだねえ」
「貴方程ではありませんよ」
・・・男がギリギリ抵抗できない程度に負傷させて、捕らえる。
きっとそれに間違いは無いのだろうけど。
でも、分からない事も幾つかあって。
何故、零にここに来ることが分かったのか。
それは男を狙撃した人間にも言えるけれど。
彼はここに来る前、男にスマホ類を取り上げられていた。
誰かに連絡は取れなかったはずだ。
それに、男は追っ手がいないか何度も確認していた。
・・・考えられるのは、男が最初からここを指定すると読んでいた、か。
でも、そもそもの疑問がある。
男が、今日、この時間に。
私達に接触してくるという保証はどこにも無いのに。
こうなる事を読んでいたとするなら・・・そこまで読んでいたことになる。
・・・そんな事、可能なのだろうか。