第97章 最終的
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事務所に近い駐車場へと戻ると、辺りはすっかり暗くなっていて。
なんだかとても長い一日だったように感じる。
・・・そう思うのは、残念ながらもう少し後のことだった。
「疲れましたか?」
「・・・少し」
車内での会話は少なかった上、彼が降谷零に戻ることは僅かでもなかった。
恐らく、安室透でもなく、バーボンでいたのだと思う。
だからなのか、この駐車場に戻って来た時は少しだけ安心してしまった。
・・・零と話ができる、と。
「部屋に戻ったらミルクティーを入れましょうか」
「はい・・・」
停車した車から降りながら、彼の提案に笑顔で頷いて。
ようやく終わる。
そんな私の浅はかな考えを嘲笑うように、車から降りた瞬間、誰かに勢い良く手を引かれては首に腕を回された。
「・・・ッ!」
苦しい、声が出ない。
首を絞められるとは、こういう感覚なのか。
でも息ができない程ではない。
限りなく、できていないに等しくはあるけれど。
その首を締め上げる主へと視線を向けようとしたが、顔を動かす事は不可能だった。
でも、その答えはすぐに出た。
「・・・久しぶりだね、子猫ちゃん」
「っ・・・!」
・・・聞きたくない声が、耳元で聞こえてきて。
一瞬にして全身に鳥肌が立った。
まさか。
まさかこんなにも早く、情報屋が接触してくるなんて。
「手を離して頂けますか」
車を挟んだ向かい側で、バーボンがこちらを睨みつけては、そう言い放った。
「悪いけど、死なない程度にはこうさせてもらうよ。噛み付かれても困るからね」
「・・・っ、う・・・」
言い終わらない内に、男は腕を更に上へと持ち上げた。
その苦しさから逃れようと、足は自然とつま先立ちになり、地面との不安定な距離を保った。
私の首を締め上げる情報屋の腕を掴んではいるものの、力の差は比べるまでもなく、剥がす事は到底無理な話だった。
「君達と話がしたい。場所を変えないか?」
そう言った男の顔は見えなかったけれど。
明らかに自分が優勢な態度を示すような口調で、私達に提案に見える命令を口にした。