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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第96章 価値感※




ーーー

車は数分走らされた後、とある地下駐車場へと止められて。

そこから再び横抱きにされながら車を降ろされると、彼は薄暗い路地を進んでいった。

・・・もう、日が傾きかけている。

そんな事に気が付く程度には、徐々にではあるが余裕ができていた。

「と、透さ・・・」

もう歩けそうだと伝えようとしたが、その瞬間彼はとある廃ビルの前で足を止めて。

所々鎖が掛かるそのドアの鍵を、私を抱き抱えたまま器用に開けた。

「・・・・・・」

・・・普段から使っているとは言い難いが、人が出入りしている痕跡はある。

部屋を見て、最初に感じたのはそれだった。
まるで、さっきまで二人で居たあの部屋のようで。

部屋には大きめのソファーとテーブル。
その上には吸殻が詰め込まれた灰皿と、幾つかの酒瓶。

・・・少なくとも、私を抱き抱える彼だけが使っている可能性は消えた。

「ん・・・っ」

ソファーに降ろされると、頬を包み込むように手の平を這わされた。

手袋のせいで、彼の手の冷たさを感じられないことに、こんなに不安を覚えるなんて。

「すまない、少し荒い手を使ってしまった」

・・・あ。
もう、バーボンじゃない。

それに気付いた瞬間、知らず知らずの内に自分の中で張り詰めていた緊張の糸が、プツンと切れた。

「・・・どういう事か、聞いても・・・いいの?」

だからと言って、体の熱が完全に覚めた訳では無いけど。

それは彼にも分かっていた様で。

「その前に」
「・・・?」

何か言いかけながら内ポケットに手を突っ込むと、そこから小瓶を取り出して。

その蓋を開けると、彼はそれを一気に口に含んだ。

「っンぅ、んん・・・ッ」

瞬時に私の唇と彼の唇を重ね合わせると、小瓶の中身は私へと流し込まれていった。

それを口の中に留めることなんてできるはずも無く、呆気なく胃まで送り込んだが、彼が唇を離したのは暫く経ってからの事だった。



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