第2章 就職先
「コナンくんと何話してたんですか?」
「色々、です」
何かあったら・・・というコナンくんの言葉に引っ掛かりを感じながらも、安室さんの入れてくれたコーヒーに口をつけた。
普段コーヒーは飲まないが美味しいと思えた。
「良かったらモーニング召し上がっていかれます?」
「いいんですか?」
安室さんの仕込むご飯にちょっと興味があった。
「じゃあ、準備しますね」
忙しい開店前にお邪魔したにも関わらず笑顔で迎えてくれて。おまけにこんな私を雇ってくれて・・・。だめだ、また悲観的になりそうだ。
暫くすると美味しそうなサンドイッチが目の前に現れた。
「結構評判良いんですよ」
「美味しそうです、いただきます」
ハムサンドだろうか。持った瞬間パンのふわふわに指を持っていかれた。口に入れた瞬間広がるパンの香りとハムの風味。マヨネーズのアクセントも利いている。
「美味しいです・・・!」
正直サンドイッチはどれも同じような味だと思っていたが、これは何かが違う。
「如月さんに褒めていただき恐縮です」
夢中で食べる私をにこにこと見つめる安室さん。気付けばあっという間に食べ終えてしまった。
「ごちそうさまです。本当に美味しかったです」
「それは良かった」
評判が良いのも頷ける。
「あの、お代は・・・」
「今日は結構ですよ、お話しようと誘ったのは僕ですし」
「でも・・・」
「では、就職祝いということで」
突然開店前に来たのは自分で、明日からお世話になるのも彼のところなのに。本当に頭が上がらない。
「すみません、じゃあお言葉に甘えて・・・ご馳走さまでした」
「お粗末様でした」
食べ終えた食器をカウンター越しに下げて、手早く洗い始める。・・・そろそろポアロも開店時間だ。
「・・・そろそろ帰りますね」
長居してしまった。さすがにこれ以上は申し訳ないので、持ってきたバッグを持ち立ち上がった。
「改めて明日からよろしくお願いします」
「こちらこそ」
帰ろうとすると安室さんが足早に玄関へ向かい、ドアを開けてくれる。私は頭をペコペコ下げながら店外へ出た。最後に深く頭を下げて、帰路についた。少し進んだところでふと振り向くと、まだ安室さんはこちらを見ていた。
目が合うとひらひらと手を降ってくれた。いつもの綺麗な笑顔と共に。