第2章 就職先
「時間などはまた改めてメールしますね」
「分かりました、よろしくお願いします」
なんだか昨日も同じことを言った気がする。この短期間で安室さんにはお世話になりっぱなしだ。
「もうこんな時間ですね」
見ると時計は7時を回っている。安室さんとの時間はあっという間のような気がした。
時計ついでに、ふと窓の外を見ると見たことのある顔。
「コナンくん・・・」
学校へ行く時間だろうか。改めて彼にも一言お礼を言っておきたい。そう思い、安室さんへ軽く伝え足早に外へ向かった。
「コナンくん・・・!」
「如月さん!」
いるとは思わなかった存在に驚いたのか、目を見開いて駆け寄ってきた。
「どうしたの?こんな朝早くに」
「ちょっと、ね」
寝ぼけて時間を間違えました、とは大人気なくて言えなかった。
「昨日のこと改めてお礼を言いたくて。ありがとう」
「僕はただ話を聞いただけだよ。・・・安室さんと話してたんだね」
ガラス越しに店内へ目を向け安室さんの姿を確認する。開店準備の続きをしているようだった。
「そうなの、色々あって安室さんの助手として明日から働くことにもなって」
それを聞いたコナンくんは店内にやっていた目線を私に移し、不安そうに暫く見つめ内緒話をする時のように手を口元にやった。
耳を近くにやれということだろうか。コナンくんの近くにしゃがんで口元へ耳を近づけた。
「何かあったらすぐに言ってね」
囁くようにそういった。何かとはなんだろう。その時は皆目見当もつかなかった。
そして子どもに心配される私の立場とは。
「ありがとう、大丈夫だよ」
笑いかけて応えると、コナンくんも笑ってくれて。
「初めてちゃんと笑ってくれたね」
言われて気付いた。今の笑顔は自然と出たもの。ああ、やっぱり彼には何かすごい力があるのかも。心の中でもくすりと笑った。
「引き止めちゃってごめんね?学校の時間だよね、いってらっしゃい」
「うん、いってきます」
元気に手を振りながら走っていくコナンくんの背中を見つめ、やっぱり子どもなんだよな、と改めて感じた。
店内に戻り、先ほどまで座っていたカウンター席にもう一度座る。