第95章 決めて※

「まだ･･･慣らしてな･･･」
「言っただろ？」

皆まで言う前に、彼は避妊具をつけ終わった様で。
流れる様な手つきで私の下着も取り払うと、ピタッとそこへ当てがった。

「入りたい、と」

待って。

「っい、ぁああ･･･ッ！！」

そんな短い言葉すら吐けない内に。
彼のモノは私のナカへと沈み込んできて。

「･･･ッ」

苦しい。
息ができない。

力を抜くことができない。

そのせいで彼が苦しいのも分かっている。

けど。
それなら尚更。

「ひ、ぁ･･･っあ･･･ッ」

慣らしてくれれば。

「息を、しろ･･･っ」

こんなに、お互い苦しくなることもないのに。

「れ･･･っあぁあ･･･ッ！！」

そんな状態なのに。

彼は私を満たすモノを引き抜いたかと思うと、それなりの強さで突き上げた。

とめどなく来る快楽に、頭がおかしくなってしまいそうで。

「や、だめ･･･っ、零･･･ッ！」
「駄目かどうかは･･･聞いた、はずだ･･･っ」

それは誤解･･･と言うのか。

いきなりだなんて、その時は思わなかったから。

「っあぁ、ン･･･ぅ、ッ」

ただ意外にも、痛みは殆ど無い。

･･･音や感覚から察するに、体は彼を受け入れる準備はできていたようで。

「零･･･っ」

もう、甘い声と共に、彼の名前を吐くことしかできない。

･･･いや。
今はそれだけできれば十分か。

「･･･ひなた」

呼吸と呼べるギリギリのものを何とかする中、彼の声が脳内に響いて。


「覚えろ」


そして、そう一言、命令された。

「･･･っ、ふ･･･ぁ･･･！」

まだ動きとしては緩かやであっても、快楽は確実にそこにある。

彼はそんな時に、大事な話をしてきたりするから。

今回もそうなのかと、無くなりかけている理性を保っては、飛びかけた意識を引き戻した。

「僕を、覚えろ･･･っ」

･･･彼を、覚える。

そこに深い意味は無いのかもしれないけれど。

どこか切なく聞こえてしまうのは、気の所為だろうか。