第95章 決めて※
「どうした?」
・・・何だか。
「ごめん、ちょっと・・・待って・・・」
妙に、緊張する。
キスはついさっきもしたのに。
自らするのも、初めてではないのに。
なのに、どうして。
この異常な心拍数の上がり方は何なのだろう。
「また待って、か」
「こ、今度のは・・・」
違う。
そう言いかけて、やめた。
だって、そんな事言ってしまったら。
「ひなた」
クスクスと余裕そうに笑いながら、彼は名前を呼んだ。
目の前に座った直後は、目を合わせていたはずなのに。
いつの間にか視線はシーツの方へと落としていた。
「ごめん・・・、恥ずかしく・・・なった・・・」
半分だけ正直に自分の心境を吐露すれば、彼の手が頬に伸びてきて。
・・・冷たくない。
その僅かにいつもと違う事にすら、思考回路が反応してしまう。
「んぅ・・・ッ!」
一瞬の間だった。
グッと引き寄せられたかと思うと、唇は触れ合っていて。
「開けて」
唇の隙間に、彼の舌先が入り込んでくる。
それが歯に当たると、小さくそう要求された。
「ン、く・・・ぅ、ふぁ・・・」
さっきよりも、貪るように。
舌が、彼の中に取り込まれてしまうんじゃないかというほど。
息をする隙はあった。
でもそんな余裕が無くて。
苦しくて頭がボーッとしてきた頃、ようやく唇は名残惜しそうに糸を引きながら離れた。
「もう、恥ずかしくないだろう?」
・・・彼のこういう余裕は、どう保っているのだろう。
今まで危険な事を幾度となく乗り越えてきたからだろうか。
・・・慣れるものでは、無い気もするけど。
「・・・っ」
勢いのまま彼に口付けると、彼の体は反動でベッドに倒れて。
正しく言えば、彼の肩を同時に押して倒したのだけど。
「ひなた・・・っ」
流石の彼も、私のその行動には驚いたようで。
起き上がろうとする彼に乗り上がると、そのままこちらから深く深くキスをした。