第94章 強制的
「僕のことを、どう思っている」
・・・眼差しは、優しい。
でも表情は真面目なもので。
それに反して、自分が拍子抜けした表情をしていることは、見えはしなくても分かっている。
「え・・・どうして・・・」
何故、今そんなことを?
「ひなたが聞いたんじゃないか」
いや、そうだけど。
そうなんだけど。
そうじゃなくて。
「い、今・・・?」
最近彼はやたらと私の気持ちを確認してくる。
そんなに不安にさせるような態度を取っていただろうか。
戸惑うように問えば、彼は小さく息を吐いて。
「今言う為に聞いたんだろう」
彼が言いたい事も、私が言うべき事も、全部分かっているつもりだけど。
・・・これは、わざとなんだろうか。
何かの作戦なのだろうか。
「えっと・・・、好き・・・だよ?」
疑問を覚えつつ、弱々しい視線ではあったが、何とかそれを逸らさずに伝えることはできた。
でも、これで正解なのか。
「ひなた」
「・・・はい」
僅かに不服そうな表情と声色で私の名前を呼べば、鼻先が触れそうなくらいまで、顔を近付けられて。
思わず再び敬語で返事をしては、無意識に彼の服を掴んでいた。
「僕はいつだって、最後だと思ってひなたに触れ、言葉を伝えている」
「・・・っ」
その言葉で、さっきの私の返事は不正解である事を知った。
大切な人を何人も亡くしてきた彼にとって、その言葉には半端ではない重みを感じた。
さっきの私の言葉が最後の彼に対する思いになるのであれば・・・私は、絶対に後悔する。
あの時・・・少し前の爆発事件の時だって彼は、きちんと伝えてくれたじゃないか。
愛している、と。
「ごめ・・・」
「そういう言葉が聞きたいんじゃないんだ」
今度は優しく。
いつもの温かくなるような声色で。
・・・やはり、これは今の私には。
「・・・愛してる」
「僕もだ」
甘過ぎる。