第93章 重ねて※
「爆発事件と怪我の事が聞きたいんじゃないのか?」
「う、うん・・・聞きたい・・・」
・・・変なのは私なのだろうか。
そう思う程に、この空気はふわふわしておかしくて。
それでも彼の話には必死に耳を傾けた。
そして、ようやく事件の一連の流れを聞く事ができた。
理解するまでには中々の労力がいった。
それでも、彼の起こしていた行動や私に命令した行動が点と点で繋がれば合点はいった。
「何となくは分かったけど・・・でも、毛利さんを犯人にした理由は・・・?」
全て説明を受けた後も、これだけは説明が無かった。
元々、彼と対立する理由になったのはこれなのに。
「僕は立場上、公に捜査ができない。でも毛利探偵がピンチになれば、コナンくんは必然的に協力者になるだろう?」
・・・全ては、コナンくんに協力してもらう為。
それが分かった時、モヤッとしてしまったこの気持ちはなんだろう。
「・・・そこに私がついてくることは?」
元はと言えば、コナンくんが私に連絡をとったことから始まった。
連絡をして来なければ・・・そもそも私は事件を知ることはあっても触れることは無かったかもしれない。
「半分、誤算だった。でも、それすらも利用することにした」
「利用・・・?」
半分という言葉も気になるが、いつ零に利用されたのかという事に首を傾げた。
「ひなたが公安側に来ないように仕向け、コナンくんに協力するようにさせた。それでもこちら側に協力する素振りを見せた場合・・・」
持っていたマグカップをテーブルに置くと、彼の視線は遠くを見つめて。
「組織への潜入は、何が何でもやめさせるつもりだった」
どこか残念そうにも聞こえる言い方に、ただ彼の横顔を見つめる他なくて。
彼にとっては、そうなった方が良かったのだろうな。
「・・・公安に協力すると、思った?」
「どこかでは、それに期待していたように思う。僕を信じてほしい気持ちと、潜入をやめさせたい気持ちで」
ほら、ね。
別に彼を信じていなかった訳ではないが、結果的にそういう事になってしまった。