第93章 重ねて※

「･･･それ、毎回言ってくるな？」
「事実だから･･･」

それでも、これは意地悪では無い、と言われることもあるけれど。

「僕にとってはひなたの方が余程、意地悪だがな」

かく言う彼も、毎回の様にそう返してくるじゃないか。
･･･という言葉は飲み込んで。

「締め付けるのが･･･？」

でもそれは不可抗力･･･。

「それもあるが･･･」

考えの最中で彼は反論の言葉を口にした途端、緩やかにピストン運動を開始して。

「っあ、ゃ･･･零･･･っ、ひぁ･･･！」

体位が変われば、感じる快楽も違う。

それに脳がついていくには、少し時間がかかるのに。

「そんなに、可愛い声を･･･出す所」

奥を突かれる度、声も押し出されて。
彼の言葉を理解したいのに、早くもそれは脳に届くだけで止まっていた。

「こんなに･･･そそられる表情を･･･っ、する、所」

･･･その呼吸の合間の声が、艶っぽい。

「名前を呼ぶ度･･･、っ、真っ赤に、なる所」

動きは緩やかなのに。
彼のそんな声が聞こえるせいか、快楽の度合いはやたらと大きく。

「･･･そして」
「い、ぁあ･･･ッ！」

ズンッと奥まで届くと、腰を大きく反らせて。

「偶にしか気持ちを、伝えない･･･所も」

言い終わるや否や、互いの唇は引かれるように触れ合った。

舌は浅く、でも深いキスで。

「ンんぅ、く･･･っふ、ン･･･んッ！！」

ピッチリと塞がれる口からは、空気を取り込むことなんてできない。

苦しい、と彼の二の腕をグッと掴んだ瞬間、彼は珍しくパッと口を離した。

いつもなら、もう少し粘っ･･･。

「･･･っ」

あ･･･。

･･･そう、だった。

「ごめ･･･っ、痛かった･･･！？」

無意識だったとはいえ、負ったばかりの傷を無造作に掴んでしまった。

一瞬だったが、彼の歪んだ表情が目に入った瞬間、血の気が引いてしまって。