第93章 重ねて※
「・・・零?」
どういう事かと尋ねようとしたが、彼からは穏やかな呼吸しか聞こえて来なくて。
はっきりと受け答えはしていたように思うが、意識が遠のく狭間で会話をしていたのだろうか。
「・・・・・・」
そんな時に彼が聞きたかったことが、さっきの事なのか。
そう思うと、どこか複雑な気持ちになった。
真意は分からないが、公安に協力体制を取らなかったことが彼の何かを煽ったのか。
それとも、協力したのがコナンくんだったからなのか。
どちらでもない可能性も勿論あるけれど。
・・・今は、とりあえず。
「・・・ふぁ・・・」
疲れた。
彼の眠りにつられるように、欠伸が出てきて。
でも、その彼に腕を掴まれているせいで寝転ぶことができない。
仕方なく、枕をベッドのフレームと背中の間に挟み込むと、ゆっくり体を後ろに倒して。
座るような体勢だけれど、今はそれでも眠りにつけそうで。
掴まれていない左手を伸ばすと、彼の髪に触れて。
少し癖のある、綺麗な金髪。
彼ぐらいのスペックがあれば、私じゃなくてもきっと良い人が見つかるのに。
何度も思った事のある、そんな悲観的な考えが浮かぶ中、それでも私を選んでくれたということに、全身で喜びを感じた。
「・・・おやすみ」
単純だ。
でも、今はそれでもいいや。
考える事をやめてしまった脳は、眠る事以外を要求しなくなって。
そのままゆっくり瞼を閉じた。
ーーー
「ん・・・っ」
浅い眠りから、ふと目が覚めた。
何か夢を見ていたような気もする。
でも、思い出せなくて。
そんな事よりも。
「・・・っ」
全身の痛みが気になった。
これは変な体勢で眠ってしまったせいだと、頭を起こしながら痛みの強い首元に手をやって。
寝起きのせいで頭はボーッとしているが、昨日の事は何となく思い出せた。
そういえば零はあの後、ちゃんと眠れただろうか。
そう思いながら、ようやく薄ら瞼を開いた時だった。