第93章 重ねて※
「寝る前に、一つ聞かせてもらいたい事がある」
「何・・・?」
頬の傷・・・の事は、彼の事だから察しがついているだろうし。
様子がおかしかった、風見さんの事だろうか。
「何故、コナンくんに手を貸した?」
そんな私の予想は、綺麗に外れた。
これもまた、彼の言う嫉妬というものからの質問なのか。
「言ったはずだよ。毛利さんやコナンくんが困っているなら、それは私にも関係があるって」
彼とは色んな意味での協力体制を取っている。
大体はお互いの利用といった所だが、でもそれはお互いにある意味での信頼もあるからで。
「それが何故かと聞いたんだ」
「・・・?」
何か疑問に思うような返答をしただろうか。
そう思い、無意識に彼へと視線を向けてしまっていて。
「何故、コナンくんにそこまで協力する」
・・・そう、か。
彼には、あまりにも肩入れし過ぎているように見えているのか。
確かに、コナンくんと会う時は彼に伝えているものの、その時は大体どこかへ遊びに行く時だ。
・・・それには毎回、何かが付き物なのだけど。
「今回は零が関わっていたからだよ」
「尚更、彼に協力した理由が知りたいところだな」
確かに、普通であれば公安側に協力すべき所だろう。
でも、何故そうしなかったのかは、彼が一番よく分かっているだろうに。
「公安の行動が間違っていると判断した・・・って、理由じゃ駄目?」
「駄目ではないが、何故間違っていると思ったんだ」
今日はやたらと追求してくることに疑問を持ちつつも、横目で少し目を伏せる彼に目をやって。
「・・・毛利さんが、悪い事するはずないから」
警察官や探偵は、最初から疑ってかかるものだけど。
でも今回のコナンくんは、毛利さんを一つも疑わなかった。
それは怪しい証拠があったからでも、公安が絡んでいたからでもない。
毛利さんを信じていたから。
「その甘さが、危険を呼んでいるんだ」
言葉と共に、私の腕を掴む零の手に力が入って。
僅かに逸れていた視線を戻すと、そこには既に瞼を落とし切った彼が居た。