第92章 執行人
『お願い、如月さん!!』
「・・・コナンくん・・・!?」
電話越しに、そして少し遠くから。
風の音に混じって彼の声が聞こえてきて。
『如月さんの力が必要なんだ!協力して!!』
コナンくんの言葉が決定打になった訳ではないが、背中は押された。
ほんの数秒、迷う思考が脳内を駆け巡ったが、答えはすぐに出た。
「分かった、どうすれば良いの?」
そう答えると、顔は見えないのに零がフッと笑ったような気がして。
『一度しか言わない、落ち着いて聞いてくれ』
「う、うん・・・」
急いでいることに間違いは無いようだ。
そしてそれが如何に深刻な事かも、ようやく感じ始めた。
『無人探査機のはくちょうは分かるな?』
「ニュース程度の知識なら・・・」
サミット会場の爆発のニュースで持ち切りな為、ついでに見る程度だったが。
確か・・・今日、帰ってくるはずでは。
『その無人探査機に不正アクセスが確認され、カプセルの切り離しができない状況だ』
「不正アクセス・・・」
・・・何が問題なのかは瞬時に理解した。
が、事が大き過ぎる上に突拍子の無い話に、正直困惑は強まるばかりで。
この話の中に、私にできることがあるのだろうか?
『探査機から切り離されたカプセルは隕石のように落ちるだけ。しかもその狂ってしまった落下先は、警視庁だと推測された』
「!」
警視庁に・・・。
『地上局から探知機へ送る信号は特定のコードで暗号化されているが、コードを犯人に変更され、探査機のメモリーの書き換えができない』
ということは、今は為す術無くただ探査機の落下を待っているだけの状況か。
・・・いや、それより・・・今。
「犯人って・・・」
『爆発を起こした犯人だ』
爆発を・・・というのは、サミット会場の?
「分かったの・・・!?」
『その話は後でする。まずはひなたにやってほしい事がある』
彼が落ち着いて聞けと言った意味が何となく分かった気がする。
確かに通常なら、冷静には聞いていられない事だ。