第92章 執行人
「いつから変だと思ってたの?」
「違和感を感じたのは最初からだよ」
最初、というと。
「毛利さんの家に公安の人が家宅捜査に来た時・・・?」
「そう」
彼のその返事には、疑問しか生まれなかった。
「どうしてすぐ調べなかったの・・・」
「実はもう博士に調べてもらってたんだ。嘘ついてごめんね。でも、如月さんにも知っておいてほしかったんだ」
知っておいてほしかった?
「これ、如月さんが作ったかもってアイツが言うから」
「?」
アイツ、とは。
聞けば聞く程、やはり疑問しか生まれない。
「違った?」
「それは・・・違わない、かも」
確証は無いが、限りなくこれに携わっていることは否定しきれなくて。
でも、赤井さん以外に私が作ったものを見せた覚えは・・・。
「あんまり、博士の家に変なもの持ち込まない方がいいよ。そういうの得意な奴がもう一人いるから」
・・・成程、哀ちゃんか。
私は彼の事も、彼の相棒も・・・そのつもりは無くとも、甘く見ていたのかもしれない。
どうやってかは分からないが、あのペンダントの構造を、阿笠邸に行った時に既に解析されていたんだ。
きっとそれを見ている相手は赤井さんではなく、零だと思われているんだろうけど。
流石に映像の転送先までは分からないだろうし。
阿笠邸とこちらから言った時点で、既に彼には先手を打たれていた、ということか。
「本当にズルいね・・・」
「そのまま返すよ」
彼に対する今までの中で一番大きな溜息を吐くと、降伏の表情を浮かべた。
「でも、コナンくんのスマホのことは・・・」
「分かってるよ」
本当に知らなかった。
そう皆まで言う前に、それは彼の言葉で遮られた。
「だから如月さんに知ってほしくて、わざわざ調べさせたんだよ」
「?」
探偵は回りくどい言い方をするのが好きなのだろうか。
その時どこか、コナンくんに沖矢さんの影がチラついて。
「安室さんにも、利用されるよってこと」
・・・利用か。
確かに、今回はそうかもしれない。
でも。