第92章 執行人
「・・・っ」
疑いたくはなかったが、着ていた服を脱いですぐに盗聴器や発信機が仕掛けられていないか、無くなった荷物はないかを調べた。
・・・そして、自分のスマホも。
「・・・・・・」
簡単にだが、調べた結果特には何かを仕掛けられた形跡は無かった。
・・・良かった。
素直にそう思うべきなのに。
どこか拭いきれない不安があるのは何故なのか。
「そうだ・・・コナンくん・・・」
気付けば、あれから40分程経っていた。
予定より早く済ませられたのは・・・仕掛けられていた追跡アプリが、私が作ったものに酷似していたからで。
でなければ、手こずっていたかもしれない。
そう思いながらコナンくんに電話をすると、先程落ち合った場所で再び会う約束をした。
すぐに準備をして事務所を出ると、街は既にオレンジ色に染まっていた。
もう、五月か。
零と出会って、既に半年以上が経っていた。
月日以上に、彼とは長く居る気がする。
それは、私の日常が大きく変わったから。
良い方にも、悪い方にも。
・・・今は、悪い方に転がっているのだろうか。
「如月さん!!」
「!」
一人思いに耽っていると、相変わらずのスピードをスケボーで出しながら、約束をした彼は姿を現して。
「どうだった・・・っ?」
着くなりコナンくんは、駆け寄りながら尋ねてきて。
渡されたままの姿でスマホを返すと、彼はそれをポケットにしまい込んだ。
「コナンくんの予想通りだよ。レンズもそうだから、気を付けて」
そういうことを察知するのは、やはり彼の本能的なものなのだろうか。
「それと・・・本当に良かったの?」
彼から、もし不審なものが仕掛けられていたとしても、解除せずそのままにしておいてほしいと言われていた。
それが何のメリットがあるのか分からなくて、調べている間ずっと不安だった。
「うん、今度はこっちが利用させてもらうから」
そう話した彼の表情は、自信のような勝ちを確信しているような、そんな風に見えた。