第92章 執行人
「何かあった?」
できれば、さっきのような事はごめんだけど。
『・・・頼んでばかりで申し訳ないんだけど、最後に如月さんに頼みたい事があるんだ』
・・・最後、とは。
「内容による、かな」
味方ではないと判断したけれど、必要以上に公安を敵に回す事だけはしたくない。
矛盾しているようだったが、それは自分の中では大きく違った。
『僕のスマホに、ちょっと細工されてるみたいなんだ。調べてくれない?』
そういうことなら、私より適任がいるのでは。
「博士や哀ちゃんは・・・?」
『ちょっと手が離せなくて・・・如月さんしかいないんだ』
そう、彼のこういう所がとてもズルいんだ。
「・・・分かった、私が言う所まで来られる?」
『うん、大丈夫』
彼がこれで最後と言うのなら。
そう思いながら指定したのは、事務所とポアロの中間地点。
なるべく今は事務所を離れることをしたくなかったが、彼に事務所の場所を教えるのも気が引けたから。
それから約30分後、私の指定した場所で落ち合うと、コナンくんからスマホを受け取って。
彼とはそのまま特に話す事はなく、スマホを調べる事ができたら連絡してほしいとだけ言われて別れた。
それも、一時間でという制限時間つきで。
颯爽とスケボーで去っていく彼の後ろ姿を見ながら、どうやら彼は私の事を過信しているようだと溜息をついた。
「・・・さて、と・・・」
事務所に戻ると、気持ちを切り替えて早速解析に取り掛かった。
特に不審なものは、表面上では見当たらない。
でも彼が一つ注意してほしいと言ったのは、カメラにも細工があるかもしれないということ。
その為か、スマホの電源は予め落とされ、カメラのレンズ部分には全て目隠しの為のテープが貼ってあった。
「・・・・・・」
スマホ自体を解体した様子はない。
彼も、これが手元から離れたのは数分の事だったという。
その時間で解体して中に仕掛けを作るのには、流石に相当な技術を持っていないと難しいだろう。