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【安室夢】恋愛ミルクティー【名探偵コナン】

第92章 執行人




「何故だろうな」
「?」

何もかも読めない彼に視線を向けながら首を傾げると、零の指先が頬に触れた。

冷たい。

その感覚に、ピクッと肩を震わせた。

「大人気無く、あんな子どもに嫉妬している」

・・・これも、彼なりの直感のようなものだろうか。

実は小学生ではなく高校生である彼を、正体を知らないながらも、一人の男性として見ているような気がした。

「・・・!」

顔が、近付いてくる。

きっとこの後、唇が触れ合う。

そう察した瞬間。

「ッ!」

いつだったかと同じように、彼の口を手で咄嗟に塞いでいた。

「こ、ここじゃ・・・ダメ・・・」

正確には、今は。

彼の突然の行動に惑わされているが、今は彼を味方ではないと判断している。

その中でこれは・・・自分の中でマズイ気がして。

「・・・っ、零・・・」

それでも彼は私が塞いだ手をゆっくり取り払うと、再び顔を近付けて。

瞼を固く閉じると、彼の顔が目の前ではなく、耳元の方へと来た気配を感じた。

「何を聞いた」
「!」

体を強ばらせる中、囁くように彼は短く聞いてきて。

それは、さっきのコナンくんの盗聴のことだろう。
私がそれに耳を近付けた所も、彼は見ていたんだ。

「・・・風見さんと、目暮警部の声」

何か言っていたような気もするが・・・一瞬の事だった上、内容を頭の中で整理する余裕は無かったから。

「それ以上のことだ」
「き、聞いてない・・・」

首を小さく振って答えると、彼の顔は耳元から離れて。

それを聞く為だけに、私をここまで連れて来たのだろうか。

「・・・事務所まで送ろう」

暫く彼は私の目を見つめた後、そう言って背を向けて歩き出した。

ついて行くべきか迷ったが、それも一瞬だった。
すぐに彼の進んだ方へと駆け寄ると、隣ではなく真後ろをついて歩いた。

弱い。
・・・弱いな、私は。

何もかも、弱い。

結局何もできないままで、彼の領域に閉じこもったままだ。




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