第91章 ゼロの
「言える範囲でいいから教えて!新一兄ちゃんが、小五郎のおじさんを助ける為に、どんな情報でもいいから欲しいって・・・っ」
・・・彼の武器は強力だな。
その必死さは本物なのだろうけど。
彼が小さくなる前に築き上げてきた信頼は、こうして使う事もできるのかと、何度目かの彼の恐ろしさを思い知った。
零が目を付け、私に探らせるのも無理無い。
改めてそう思っていた矢先だった。
「毛利先生が・・・どうしたって?」
「!!」
一瞬、コナンくんから目を離した瞬間だった。
その想像していた零の声がイヤホン越しに聞こえてきて。
ゆっくりと、柱に姿は隠したまま、顔だけをコナンくんの方に向けた。
そこには、ソファーに座る二人の前に立つ、零の姿があった。
「・・・聞いてたの?」
「何を?僕は毛利先生が心配で、ポアロから差し入れを持って来ただけだよ」
そう言いながら零は、手にしていた紙袋を彼らに見せて。
まるでここにコナンくんが居るのが、最初から分かっていたような雰囲気だ。
・・・まあ、彼は元々そんな感じと言えばそうなのだけど。
「あぁ・・・毛利くんはもうここにはいないよ」
「送検されたら原則、身柄は拘置所へ行く・・・安室さんが知らないはずないよね」
コナンくんの言葉から、何処と無く敵意を感じる。
やはり彼にとって今回の零は、敵だと判断しているのか。
そしてそれが覆ることは無い・・・のだろうか。
そう思うと何故か少しだけ、寂しいような悔しいような気もした。
「へぇ、そうなんだ。君は相変わらず物知りだね」
白々しい言い方。
警察官の彼が知らないはずがない。
それは確かだ。
・・・でも一つ疑問なのは、何故ここに彼が現れたのかということで。
そんな事を考える間も無く、零は体を出口の方へと向けると、ゆっくり歩みを進めた。
「あ、それから・・・拘置所に、そういったものは差し入れできないよ」
「分かりました!」
目暮警部の忠告に、零は背中を向けたまま手を上げて。
どうやら私には気付いていないようだけど。
本当に彼は何をしにここへ・・・。
「!」
息を殺しながら自然と彼を目で追っていると、その先に見覚えのある人影を見付けてしまった。