第91章 ゼロの
「・・・その弁護士、どこかおじさんの起訴を望んでいるように感じるんだ」
「・・・・・・」
裁判や警察組織内部にあまり詳しくない私には何とも言えないが、彼がそう感じたのであれば、その弁護士に何かはあるのだろう。
「それで如月さんに、その弁護士のこと調べてもらいたいんだけど・・・」
どこまでも私を味方につけるつもりなのか。
それとも、一か八かの勝負に出ているのか。
調べた末に何も見つけられなかったら・・・。
「・・・・・・」
あれ。
私、今。
「・・・如月さん?」
「ごめん、何でもない。できる限り、調べておくね」
何も無いのは良い事ではないのか。
毛利さんを助けられる糸口になる。
その反面、どこか最初から、その弁護士に何かあると確信していた自分もいた。
それは・・・零を不信に思っているから?
ーーー
警視庁に着くと、あれからタクシーでコナンくんに指示された通り、彼とは別れて近くの柱に身を隠した。
彼から借りた帽子を目深に被ると、同じく借りた通信式のイヤホンを耳につけた。
直接、警視庁で行動するのは控えようと言い出したのはコナンくんの方で。
今は彼の指示に従い、目暮警部との会話は通信機越しに聞くことにして。
「目暮警部!」
「おぉ、コナンくん」
備え付けられていたソファーに座り待っていたコナンくんの元に、目暮警部が近付いてきて。
その様子を、柱に背を付けながらこっそり伺った。
「小五郎のおじさんのパソコンが誰かに操られた可能性を調べてるんだよね?」
彼らの会話は即座に始まった。
手馴れているというのか、初めてではないようなその雰囲気に異様な感じもした。
「まあ、確かに、日下部検事に追加の捜査を頼まれてはいるんだが・・・」
日下部検事・・・さっきコナンくんが言っていた、裁判を担当する検事さんのことだろうか。
そして警部さんのはっきりとしない物言いに、それができないということは私でも感じることができた。