第13章 愛して※
「こうするんですよ」
言うなり私の後ろ頭を片手で抑え、逃げられないようにされて。
色々思うにはもう既に遅過ぎた。
「・・・・・・っ!」
目をギュッと瞑り、体が自然と身構える。
「・・・・・・・・・?」
その状態のまま数秒は経っただろうか。触れると思っていた所にそれは触れなくて。
戸惑いからゆっくりと目を開けた。
「すみません、意地悪されたので意地悪し返しました」
目が合うとそう言われて。顔が熱くなるのが分かった。ペースを崩すどころか完全に巻き込まれている。
私には度胸が圧倒的に足りないんだな、と痛感して。
「・・・透さん、意地悪好きですよね」
「ひなたさん程ではありませんよ」
私はさっきの事しか覚えがないが、と考えながら透さんの膝から降りようとすると。
「おや、してくれないんですか」
透さんが自分の唇を指差しながら挑発的にそう言われた。その顔はいたずらっ子のような笑顔で。前にもこの笑顔を見た気がする。
「・・・できませんでした」
今の気持ちも含めての結果報告を改めてし、隣へ座り直そうとすると、今度は腕で体を固定されて。
「ちょ・・・透さん・・・っ」
「してくれるまで、逃がしませんから」
きっと楽しんでる。
さっきあのまま彼にキスが出来ていたら少しはこの余裕を崩せていたんだろうか。でもきっと透さんのことだから、それでも余裕いっぱいなんだろうな。
「・・・私はこのままで良いです」
恥ずかしさはあるが、別に離れたい訳ではない。キスしそびれた唇は疼いているようだけれど、彼と触れ合ったままならそれで今は十分で。
「ほぉー、そうきましたか」
では、と私を抱き抱えソファーに座り直させて。逃がさないと言われた体は簡単に剥がれた。
「・・・え?」
行動の意味を無言で尋ねるように、彼へ視線を送った。さっきまでの意地悪な笑顔のまま、彼もまたソファーに座り直して。
「してくれるまでは触れ合わない、に変えましょうか」
コーヒーに口をつけながらそう言って。それはそれで耐えられたと思う。さっきの行動をしたりされるまでは。
頭では大丈夫だと思っているが、体は無理だと叫んでいる。相反する状況に、おかしくなってしまいそうで。