第91章 ゼロの
組織で失敗をして、ジンに何度も撃たれ、死ねない夢。
私が死ねないのならと、今度は零に銃口を向けられて。
その引き金に手をかけ、発砲音がした瞬間、私は目を閉じてしまう。
次に目を開いた時、視界は涙で歪んでいた。
「・・・・・・」
今が夢なのか現実なのか分からない。
そんな狭間の中、何か機械的な音に脳だけが反応した。
「・・・っ・・・」
頭が痛い。
体も重い。
それでも何とか体を起こすと、ここが夢ではなく現実であることを実感する。
いつの間にか眠ってしまっていたのか、と。
「・・・?」
そして、ベッドに放り出されていたスマホが震えていることに気付くと、ゆっくりそれに手を伸ばした。
電話が掛かってきていることに気付いたのは、それに出た時で。
そのくらいには、暫く寝ぼけていた。
「はい・・・?」
電話には出たが、相手が誰なのか確認していない。
そもそも私は、何故眠っていたのだろう。
『如月さん?』
「・・・?」
スマホから、声が聞こえる。
そんな当たり前な事に疑問を持ちながらスマホの画面を確認すると、そこにはコナンくんの名前が表示されていた。
「コナンくん・・・?」
『あ、ごめん・・・寝てた?』
彼と会話を始めたことにより、ようやく何処までが夢だったのか、何処からが現実だったのかが分かり始めて。
寝ていた事が電話越しに彼に伝わる程、声に出てしまっていたか、と立ち上がるとコップを手に取った。
「ちょっとね・・・、どうかしたの?」
コップに水を入れると、それを電話を終えた時に飲むように机に置いて。
『目暮警部に話を聞きに行くんだけど・・・如月さんも行かない?』
目暮警部・・・というと、あの時の恰幅の良い警部さんか。
「・・・まだ、零と話はできてないよ?」
だから、私はまだコナンくんの味方かどうかは分からない。
それは、公安の人にも言える事だけど。
『だからだよ』
素早く、そう返答する彼に納得した。
「・・・成程ね」
零と話をして変に説得等をされていない今、コナンくんと行動を共にすれば、彼の味方になりやすい。
そうなる前に。
早めに、私へ声を掛けたのだろう。